HERNIA
鼠径ヘルニア
Inguinal Hernia
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアは、外来日帰り手術で治療ができる良性の疾患です。欧米では80%以上が外来日帰り手術で治療されています。 日本でも年間12~15万件、手術が行われていますが、まだまだ外来日帰り手術の医療施設が少ないのが現状です。 日常の生活リズムを崩さない外来日帰り手術は、手術時間も短く、術後の痛みも少なく早期に社会復帰ができるようになりました。
当院では、5000症例の日帰り手術の経験から、患者さまの症状や病気の状態にあった最適な治療法について詳しく説明させていただきます。
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目次
鼠径ヘルニアについて
鼠径ヘルニアとは?
一般に「脱腸」と呼ばれる良性の病気です。子供と40歳以上の男性に多く見られます。成人の鼠径へルニアは、加齢と共に下腹部(鼠径部)の筋肉組織が弱くなり、その部分(穴・裂け目)からお腹の中にある腹膜や腸が飛び出す状態をいいます。
鼠径ヘルニアの種類
鼠径ヘルニアにはいくつかの種類があります。単に鼠径ヘルニアと言っても年齢や性別によって、脱出する部位は様々です。外鼠径ヘルニアや内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアが同時に起こることもあります。
そけいヘルニアの治療法
手術方法について
当院ではおもに以下の4種類の手術を行っています。
メッシュプラグ法
鼠径部を約3〜4cm切開して行います。ポリプロピレン製の人工補強材を使用します。
鼠径ヘルニア手術としては、最も一般的で安全な手術法のひとつです。
Marcy法
鼠径部を約2〜3cm切開して行います。ヘルニアの出口(穴)を縫い合わせて塞ぐ手術です。比較的若い女性の症例が適応になります。
腹腔鏡下誘導鼠径部切開法(ハイブリット法)
最初にお臍の頭側を約5mm切開し、腹腔鏡を入れてお腹の内側からヘルニアの出口を観察します。その後、鼠径部を約3〜4cm切開して人工補強材を最適な部位に正確に留置します。
すべての患者様、特に再発症例、大きなヘルニア、癒着等が予想される症例、両側症例等が良い適応と考えます。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)
お臍の上を約5mm、左右脇腹を5mmずつ合計3ヶ所切開して行います。
お腹の内側からヘルニアの出口を人工補強材で補強する手術です。
鼠径部切開法 | 腹腔鏡下手術 | |||
術式名称 | メッシュプラグ法 | Marcy法 | ハイブリット法 | TAPP法・TEP法 |
皮膚切開の 位置と大きさ (右側の場合) |
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当院での適応 | すべての患者さま | 若年女性の患者さま (50歳くらいまで) |
すべての患者さま 特に再発症例、大きい症例、戻りにくい症例など |
体力のある若い患者さま |
麻酔方法 | 全身麻酔 | 全身麻酔 | 全身麻酔 | 全身麻酔 |
人工補強材 | (+) | (-) | (+) | (+) |
およその手術時間 | 20~30分 | 10~20分 | 30~40分 | 60~100分 |
手術の長所 ◯ |
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手術の短所 × |
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手術費用 保険適用 |
約5万円 | 約4万円 |
約11万円 |
約11万円 |
※手術費用は3割負担の場合です。横浜市高額療養費制度の詳細は コチラ
* 1割・2割負担の場合は、外来自己負担限度月額(8,000〜18,000円)以内となります。
当院では、ヘルニアの状態を検査でしっかりと診断して
患者さまに合った最適な手術方法を選択します。
合併症について
1.鼠径ヘルニアの手術で、代表的な合併症について説明いたします。
皮下出血
術後の皮膚の下の出血により、キズの周囲から陰嚢・陰茎にかけて皮膚が紫色に変色することがあります。1ヶ月程度続きますが、特に治療は必要ありません。高齢の方や血液をサラサラにするお薬を内服している患者さまに多い合併症です。
皮下血腫
術後に極細の血管が切れて、キズの内側に血液が溜り腫れてくる状態です。痛みを伴うことが多いです。症状が強い場合は切開して血腫(血のかたまり)を搔き出す必要があります。高齢の方、糖尿病の患者さまや血液をサラサラにするお薬を内服している患者さまに多い合併症です。
創部の腫脹・漿液貯留(漿液腫)
手術の剥離操作により、キズの周囲から陰嚢にかけてリンパ液が溜まり浮腫んで膨らむ状態です。
通常、痛みはありません。2〜3週間程度続きますが特に治療は必要ありません。膨らみが大きい場合は注射針を刺して溜まったリンパ液を抜くことがあります。また、ごく稀ですが陰茎が浮腫むことがありますが数日間で軽快します。
創部の硬結
キズが硬くなることがあります。これは皮膚の内部の脂肪組織が硬くなることで生じ、キズが治る過程の現象ですので心配ありません。
創部の違和感
人工補強材が身体に馴染む間での期間(術後2〜6ヶ月間)、キズに違和感を感じることがありますが徐々に軽快してきます。
感染(創部感染・メッシュ感染)
手術創部(キズ)の感染は、どんなに予防してもすべての手術で起こる可能性がある合併症です。軽症であれば、創部の処置(洗浄など)や内服薬・外用薬で軽快します。メッシュ感染を起した場合は、再手術が必要となる場合があります。喫煙者や糖尿病の患者様に多い術後合併症のひとつです。
精管損傷
再発症例や巨大な症例、または術中の癒着が想定される症例では、精管(睾丸で作られた精子が通過する管)や周囲の血管などを、やむを得ず切離する必要があります。
術後慢性疼痛
術後に3〜6ヶ月経過しても継続する痛みを、「術後慢性疼痛」といいます。原因は様々ですが、キズが治っていく過程で、周囲の神経や精管を巻き込むことが原因のひとつです。
2.腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP法)に特有な合併症について説明いたします。
腸閉塞症、腸管損傷、血管損傷など
腹腔内からの手術操作になるため、以上のような合併症の危険性があります。
血栓症、皮下気腫、心肺機能への影響
腹腔鏡下手術は、腹腔内に炭酸ガスを充満させて、頭を低くして(頭低位)にして行います。従って、血栓(血の固まり)ができたり心臓や肺に多少の負担がかかります。
術後経過についての説明
術中・術後経過が順調な場合、術後30分程で離床ができます。その後問題がなければ、術後2時間程で退院となります。退院後は室内での日常の動きに制限はありませんが、気分不快や創部の痛みが生じたときは休憩を取るようにしてください。
術後の診察は、手術翌日もしくは翌々日と術後1週間目と2週間目の3回になります。
術後の経過観察について
当院では、術後半年後と1年後に受診して頂いております。診察や画像検査(エコー)により、慢性疼痛の有無や、入れたメッシュの状態の確認、再発の有無等を確認させて頂きます。
再発についての説明
鼠径ヘルニアを手術により治療した後、その部位が再度ヘルニアになることを再発といいます。
当院での再発率は、鼠径部切開法でも腹腔鏡下手術でも他施設と比較して非常に低い(1%以下)と考えますが0%ではありません。再発が起こる時期としては、術後1年目前後が多いです(当院調べ)。
症状は、手術前と同じように、やわらかく押せば戻るようなふくらみが同じような場所にみられます。
また、痛みや違和感のみであっても再発の兆候のこともあります。このような症状がありましたら、早めに病院を受診してください。
手術費用について
手術費用について、およその金額についてご提示します。
3割負担例)54,000円〜120,000円(初診/術前検査7,000円・鼠径ヘルニア手術44,000〜110,000円・術後再診3,000円)
時間や使用する薬剤等により、多少の増減がある事はご理解下さい。
* 1割・2割負担の場合は、外来自己負担限度月額(8,000〜18,000円)以内となります。
鼠径ヘルニア手術Q & A
自宅で創部(キズ)の処置は必要ですか?
就労について?
術後の運動は?
シャワー・入浴について?
その他日常生活の注意点は?
男性機能について?
日帰り手術の制約はありますか?