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2026年3月15日

陰嚢水腫の悩みと、新しい選択肢

陰嚢水腫の日帰り手術:新しい選択肢「アクロサージ」

はじめに:その「腫れ」ひとりで悩んでいませんか?

「最近、片方の陰嚢が大きくなってきた気がする」 「痛みはないけれど、歩くときに違和感がある」 「お風呂で鏡を見るたびに不安になるが、場所が場所だけに相談しにくい」

泌尿器科の外来を訪れる患者様の中で、実は少なくないのがこの「陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)」のお悩みです。痛みがないために「放っておけば治るだろう」と数ヶ月、時には数年放置してしまう方もいらっしゃいますが、次第に大きくなる袋に精神的なストレスを感じている方も多いのが現状です。

今回は、陰嚢水腫の基本的な知識と、今注目されている最新の治療機器「アクロサージ(マイクロ波手術器)」が、いかに治療のハードルを下げたのかについて詳しく解説していきます。

陰嚢水腫とは?なぜ水が溜まってしまうのか

陰嚢水腫とは、精巣(睾丸)を包んでいる「鞘膜(しょうまく)」という袋の中に、本来なら吸収されるはずの液体が過剰に溜まってしまう状態を指します。

成人の場合、その多くは原因不明ですが、鞘膜からの液体の分泌と吸収のバランスが崩れることで、徐々に水が溜まっていきます。放置しても命に関わる病気ではありませんが、自然に水が引くことは極めて稀です。

大きくなるとソフトボール大やそれ以上になることもあり、「ズボンがきつい」「座る時に邪魔になる」「見た目が気になって温泉に行けない」といった、生活の質(QOL)の低下を招きます。

CT画像で見る陰嚢水腫(黄色枠)

従来の治療法が抱えていた「ジレンマ」

これまで、成人の陰嚢水腫を根本的に治すには、手術で「水の溜まる袋(鞘膜)」を処置する必要がありました。しかし、従来の手術には以下のような懸念点がありました。

  1. 出血のリスク: 陰嚢の組織は非常に血流が豊富で、かつ皮膚が伸びやすいため、術後に内部でじわじわと出血(血腫)が起こりやすい部位です。

  2. 術後の腫れ: 出血や炎症を抑えるため、数日間の入院や、血抜きの管(ドレーン)の留置が必要になることが一般的でした。

  3. ダウンタイム: 仕事を1週間ほど休まなければならず、忙しい働き盛り世代にとっては大きなハードルとなっていました。

水を注射器で抜く「穿刺吸入」という方法もありますが、これは一時しのぎに過ぎず、数週間から数ヶ月で再発するため、根本的な解決にはなりません。

医療の進化がもたらした光:アクロサージ(マイクロ波手術器)

こうした「手術はしたいけれど、入院や術後の腫れが怖い」という患者様の不安を解消する画期的なデバイスが、アクロサージ(Acrosurge)です。

アクロサージはマイクロ波

アクロサージは、電子レンジなどにも使われる「マイクロ波」を利用した手術器具です。従来の電気メスやレーザーとは異なり、組織に含まれる水分を振動させて熱を発生させることで、「組織の切開」と「確実な止血」をほぼ同時に行うことができます。

この「止血能力の高さ」こそが、陰嚢水腫手術において極めて重要な鍵となります。アクロサージを使用することで、術中の出血を最小限に抑え、術後の大きな腫れ(血腫)のリスクを劇的に低減させることが可能になったのです。

まとめ:一歩踏み出すための新しい選択肢

「手術は怖い、でもこのまま腫れを抱えて生きていくのも辛い」 そんなジレンマを抱えている方にとって、アクロサージを用いた低侵襲な手術は、新しい救世主となるかもしれません。

技術の進歩により、かつては入院が必要だった手術が、より安全に、より体への負担を少なく行える時代になっています。ひとりで悩まずに、まずは専門医に相談することから始めてみませんか?

注)現時点で陰嚢水腫にアクロサージを使う手術は保険診療では認められていません。その為、治療は全て自費診療になります。詳しくはコチラから・・・


次回予告:第2回「なぜ腫れない?痛くない?マイクロ波(アクロサージ)の科学」 次回は、アクロサージがなぜこれほどまでに止血に優れているのか、その具体的なメカニズムと、患者様が得られる具体的なメリットについてさらに詳しく深掘りします。


【今回の記事のポイント】

  • 陰嚢水腫は自然治癒は望めず、放置するとQOLを下げる。

  • 従来の手術は術後の「腫れ」や「血腫」が課題だった。

  • 最新の「アクロサージ」はマイクロ波で出血を劇的に抑える。

  • 低侵襲な治療の登場で、手術へのハードルが下がっている。

 

横浜みなと外科クリニックでは、鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫について日帰り手術を行なっております。多くの症例を経験していますので的確な診断と治療方法について診察しております。

お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

横浜みなと外科クリニック 院長 川崎篤史

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