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鼠径ヘルニア(6)治療④
鼠径ヘルニアの治療の実際
鼠径ヘルニアの治療は、今も昔も外科的に手術をする以外に治す方法はありません。
初診で、鼠径ヘルニアの患者さまに、「治療方法は手術以外に方法がありません」と必ずお伝えしております。でも、患者さまの中には、『どうしても手術はしたく無い』『恥ずかしい』『麻酔が不安・・・』などさまざまの理由により手術を希望されないことがあります。医療を施す側として、患者さまの意思を尊重する事が必要ですので、当然ながらその後の治療はできません。
ただし、放置することによるリスクの説明を行います。鼠径ヘルニアの症状を放置すると、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすだけでなく、ごく稀に命の危険な状態になることがあります。 その危険な状態を「嵌頓(かんとん)」と呼び、鼠径ヘルニアの場合は鼠径部から飛び出た腸などの臓器が戻らなくなることをさします。
鼠径ヘルニアの病状、治療方法についても豊富なWeb情報から、短時間にたくさんの情報が得られるようになりました。その影響もあり、20年前に比べ、巨大な鼠径ヘルニアの患者さまは減ったように思います。
話はガラリと変わりますが、みなさまは信楽焼の狸はご存知だと思います。独特の風貌で、愛嬌があり縁起の良い置き物とされています。
その理由ですが、たぬきは「た(他)」「ぬき(抜く)」=「他を抜く」という意味に通じるため、「商売繁盛の縁起物」として昔から店先に置かれるケースが多くあります。さらに、信楽焼たぬきの置物は「八相縁起(はっそうえんぎ)」と呼ばれる、8つの縁起の意味を伴ってあの姿形をしています。
「八相縁喜」とも呼ばれる各部位別の意味は、下記の通りです。
「笠」…思いがけない災難から身を守る
「笑顔」…お客様にはいつも笑顔で応対する
「目」…周囲をよく見渡して気配りと正しい判断を行う
「お腹」…冷静さと大胆さの象徴
「徳利」…人徳に通じる
「通帳」…信用の象徴
「尻尾」…終わりよければ全てよし
「金袋」…金運の象徴
話は逸れましたが、「金袋」…金運の象徴の様な巨大鼠径ヘルニアになってしまう可能性があります。「巨大鼠径ヘルニア」陰嚢に達するいわゆるscrotal herniaのうち、ヘルニア嚢の下端が立位にて大腿内側中線から下方までに達する鼠径ヘルニアのことで、横浜みなと外科クリニックでは日帰り手術の対象外としています。
鼠径ヘルニアは放置していると、元に戻らない状態になる事があり、細かく分類されています。
まず、突然出っ張りが戻らなくる状態を、急性非還納性ヘルニア(Acutely irreducible hernia)と言い、血流障害の有無に関係なく、急に発症する前は還納可能であったが、発症後は還納できなくなったヘルニアのことです。
また、出っ放しで組織の血流障害が出る状態を 絞扼性ヘルニア(Strangulated hernia)といい、突出した、腸や脂肪などの内容物が絞扼したヘルニアのことで、緊急手術が必要な状態になる事があります。(画像診断や手術診断でヘルニア内容に血流障害があるものを含む)
慢性的に脱出し還納できないヘルニアを、慢性非還納性ヘルニア(Chronically irreducible hernia)と言います。
信楽焼の狸から、ヘルニア状態の専門的なことをお伝えいたしましたが、日帰り手術同様、治療方法に関する事全て、医療は日進月歩です。絶えず情報を得てブラッシュアップしていく姿勢が必要だと考え、診療にあたっております。
横浜みなと外科クリニックは、外来日帰り手術専門のクリニックです。鼠径部ヘルニアの日帰り手術を中心に専門的取り組んでおります。
横浜みなと外科クリニック 院長 川崎篤史
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