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鼠径ヘルニアの手術について
鼠径ヘルニアの手術について、最終的に手術を受けるかどうかは「本人の希望があれば」とお伝えしています。それには、主に以下の理由があります。
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緊急性の低い良性疾患であるため: 鼠径ヘルニアは、がんなどのように生命に直結する緊急性の高い病気ではありません。多くの場合は、症状がすぐに悪化したり、命に関わるような事態になったりすることは稀な「良性の病気」とされています。そのため、緊急で今日明日中に手術が必要というわけではなく、患者さん自身が症状にどの程度困っているか、手術を受けることのメリットとデメリットをどう捉えるかによって、治療のタイミングや選択肢が変わってきます。
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患者さんの生活の質(QOL)の改善が主な目的であるため: 鼠径ヘルニアの手術は、痛みや不快感の解消、見た目の改善、そして将来的な嵌頓(腸がはまり込んでしまう緊急事態)のリスクを避けることが主な目的です。これらの目的は、患者さん自身が「この症状を治したい」「嵌頓のリスクをなくしたい」と強く希望することで、手術の意義が大きくなります。症状が軽度で、日常生活にほとんど支障がないと感じている方もいらっしゃるため、無理に手術を勧めることはありません。
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手術にはリスクや負担が伴うため: どんな手術にも、少なからずリスク(出血、感染、麻酔のリスク、再発など)や身体的・精神的な負担が伴います。日帰り手術とはいえ、麻酔をかけ、体にメスを入れることに変わりはありません。これらのリスクや負担を理解し、それでも手術を望むかどうかは、最終的には患者さん自身の意思に委ねられるべきだという考え方です。
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嵌頓のリスクがすべての人に高いわけではないため: 鼠径ヘルニアの最も危険な合併症である嵌頓は、決して確率が高いものではありません。常に嵌頓するリスクを抱えているわけではなく、多くの場合は、ヘルニアが出たり入ったりを繰り返しながら経過します。「本人が『この状態を治したい』と希望されれば、手術を予定していくようになります」という説明をさせて頂いております。
ただし、自然治癒はしないこと、そして嵌頓のリスクは常に存在することは重要な点です。症状が軽いからといって放置しすぎると、いざという時に緊急手術が必要になる可能性もゼロではありません。
これらのメリット・デメリット、リスク、そしてご自身の症状の程度を総合的に判断し、最終的に納得して治療を選択できるよう、情報を提供しています。
鼠径ヘルニアに関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
横浜みなと外科クリニック 院長 川崎篤史
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