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鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫の関連性

鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫の関連性

鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫には深い関連性があります。

原因が共通している場合もあれば、片方がもう一方の病気を引き起こすこともあります。以下にその関係性を詳しく解説します。


1. 解剖学的な原因の共通性

最も基本的な関連性は、胎児期の体の成り立ちにあります。

  • 腹膜鞘状突起の名残:
    赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるとき、精巣(睾丸)はお腹の中で作られ、徐々に陰嚢まで降りてきます。この時、腹膜の一部が精巣と一緒に袋状に伸びてきて、通り道を作ります。この通り道を「腹膜鞘状突起」と呼びます。
    • 通常、この通り道は生後まもなく自然に閉じます。
    • この通り道が閉じずに残ってしまうことが、両方の病気の主な原因となります。
通り道の状態   病気の種類    内容物
広く開いている 鼠径ヘルニア 腸や内臓脂肪がお腹の中から陰嚢まで脱出する
狭く開いている 交通性陰嚢水腫 お腹の中の液体(腹水)だけが陰嚢に流れ込み、溜まる

このように、通り道の太さの違いによって、鼠径ヘルニアになるか、陰嚢水腫(交通性)になるかが決まります。小児の陰嚢水腫はこのタイプがほとんどです。


2. 大人の陰嚢水腫と鼠径ヘルニアの関係

大人の場合、子供とは少し異なる点があります。

  • 非交通性陰嚢水腫: 大人の陰嚢水腫は、お腹の中との交通がない「非交通性」が多いとされています。これは、精巣を包む膜から液体が過剰に分泌されたり、吸収が悪くなることで水が溜まる状態で、正確な原因は不明です。この場合は、鼠径ヘルニアと直接の原因は異なります。
  • 鼠径ヘルニアによる影響: 大人の場合でも、鼠径ヘルニアが原因で二次的に陰嚢水腫が起こることがあります。ヘルニアによって陰嚢内の血管やリンパ管が圧迫され、液体の流れが悪くなることで水が溜まってしまうのです。
  • 鼠径ヘルニア手術後の発症: 鼠径ヘルニアの手術後に、合併症として陰嚢水腫や漿液腫(しょうえきしゅ)という液体が溜まる状態が起こることがあります。これは、手術でヘルニアがあった空間に体液が溜まることなどが原因で、多くは時間とともに自然に吸収されます。

3. 症状の見分け方

ご自身で判断するのは難しいですが、一般的に以下のような違いがあります。

       鼠径ヘルニア 陰嚢水腫
腫れの硬さ 比較的柔らかいことが多い 弾力があり、パンパンに張っている感じ
還納性 横になったり、手で押したりすると、お腹の中に引っ込むことがある 通常、押しても引っ込まない
大きさの変化 体勢によって大きさが変わりやすい 一日の中での大きさの変化は少ない(交通性の場合は変わることも)
透光性試験 光を当てても透けない 暗い部屋で陰嚢にペンライトなどを当てると、光が透けて見える

まとめ

鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫は、解剖学的な成り立ちが共通している場合があり、非常に関連の深い病気です。鼠径ヘルニアが陰嚢水腫を引き起こすこともありますが、大人の陰嚢水腫の原因の多くは不明です。

陰嚢の腫れや大きさに気づいた場合は、自己判断せずに早期に受診し、正確な診断を受けることが重要です。超音波(エコー)検査などで、中の状態を詳しく調べることができ、症状や状態によっては日帰り手術が可能となります。

横浜みなと外科クリニックでは、鼠径ヘルニアと大人の陰嚢水腫について日帰り手術を行なっております。多くの症例を経験していますので的確な診断と治療方法について診察させていただきます。

お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

横浜みなと外科クリニック 院長 川崎篤史

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